みなさまと共に歩んで半世紀

取扱い弁護団事件

 

国頭村での平成28年度森林伐採に対する抗議声明

 

 当事務所の喜多と赤嶺が共同代表、下地が事務局長を務めるやんばるDONぐり~ずは、日本森林生態系保護ネットワーク(CONFE Japan)等の自然保護団体有志とともに、国頭村森林組合による平成28年度の森林伐採に対して、「①国頭村有地において現在進行中の伐採を直ちに中止すること ②今後やんばるの森林の伐採を行わず保全・保護のためのあらゆる方策をとること」を求め、2017年2月22日に抗議声明を発表しました。

 抗議声明は、国頭村森林組合、国頭村、沖縄県知事、環境大臣、林野庁長官等に送付しました。

 以下、抗議声明の全文です。

 

 

抗議声明

2017年2月22日

関  係 者 各 位

抗議声明の趣旨

 我々は,国頭村有地において現在進行中の伐採に対して抗議の意思を表明するとと もに,下記のとおり緊急に提言する。

1 国頭村有地において現在進行中の伐採を直ちに中止すること

2 今後やんばるの森林の伐採を行わず保全・保護のためのあらゆる方策をとること

抗議声明の理由

1 環境省及び沖縄県は,やんばる地域の世界遺産登録を目指す立場を明確にしている。環境省は,2016年9月15日,国内33箇所目の国立公園として,沖縄島北部地域を「やんばる国立公園」として新たに指定した。これは世界自然遺産への登録をにらんでのことだという。

 また,政府は,2017年2月2日までに,「奄美大島,徳之島,沖縄島北部および西表島」の世界遺産登録への正式推薦書をユネスコ本部に提出した。

 

2 他方,国頭村内では,現在,下記の3か所において伐採が行われている。その伐採は,皆伐という,草木を全て伐採して山を丸裸にする方法を採っている。

 1.字謝敷・智津気山1249―1     4.96

 2.字辺土名・内間1094―393    1.50

 3.字宇良・与俣原317―15      2.40

 このうち①字謝敷の伐採地は,国立公園の第2種特別地域に該当する。国立公園内において4.96haという広範囲が皆伐されているという事実は,国立公園の指定が,やんばるの自然保護に十分な有効性を発揮していないことを示している。

 

3 やんばるは,世界自然遺産登録条件のうち、「生態系」及び「生物多様性」の項目に該当する可能性があるとされている。

 しかし,皆伐が行われ続けると,上記登録基準に非該当とされ,登録が困難になることは明らかである。

 

4 やんばる地域の世界自然遺産登録を目指している環境省,沖縄県及び国頭村が,このような事態を容認・放置するのは,行政として矛盾した対応である。

 世界遺産登録は,やんばるに世界的な注目を集め,集合知をもってその発展を模索する契機となりうる。持続可能性を無視して自然を利用し続けること及び人間が生活して富を得るための代償であるならばやむを得ないという態度を再考し,国頭三村が森林の保全・保護と経済的自立を両立する機会として利用すべきである。

 我々は,環境省,沖縄県及び国頭村に対し,世界遺産登録という方向性に沿い,やんばるの自然をこれ以上破壊せず,保全・保護する方策を採るよう提言する。

 

抗議声明表紙 別紙

画像をクリックするとPDFで抗議声明と添付資料をご覧いただけます

2017年02月23日(木)

高江オスプレイパッド建設差止仮処分抗告審決定に対する声明

 

 2016年12月15日に、福岡高等裁判所那覇支部が下した高江オスプレイパッド建設差止仮処分抗告事件の決定に対して、高江ヘリパッドいらない住民の会と高江弁護団は、共同声明を出しましたので、下記のとおり紹介します。

        高江オスプレイパッド建設差止仮処分抗告審決定に対する声明

 東村高江のオスプレイパッド建設に関し、高江住民ら31名が、その工事差止めの仮処分命令の申立を却下した那覇地裁決定に対する抗告審において、福岡高等裁判所那覇支部は、本日、住民らの抗告を棄却した。
 つい2日前には、オスプレイの墜落事故が発生し、オスプレイの危険性が現実化したばかりであるにもかかわらず、このような危険な航空機の運用を前提とする本件オスプレイパッド建設工事を是認する本決定は、法の番人としての責務を放棄し、住民らを危険にさらすものであって到底是認することはできない。
 また、騒音の問題に関しても、現在建設中の各オスプレイパッドが、既に運用を開始しているオスプレイパッドよりも高江集落から離れていることを殊更に取り上げて騒音被害を矮小化しているが、これは、各オスプレイパッド間を訓練飛行する可能性を完全に無視するものであって、本件における事実関係から目を背け、騒音被害に対して文字どおり耳を塞ぐものと言わざるを得ない。
 私たちは、裁判所が人権の砦としての役割を放棄し、政府の行為を無批判に追認して騒音被害の発生に手を貸した上、住民らを生命の危険に晒す判断をしたことに対して、強く抗議するものである。

                              2016年12月15日
                              ヘリパッドいらない住民の会
                              高 江 弁 護 団

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2016年12月16日(金)

高江オスプレイパッド建設差止仮処分申立事件決定に対する声明

 

 2016年12月6日に那覇地方裁判所が下した高江オスプレイパッド建設差止仮処分申立事件決定に対して、高江ヘリパッドいらない住民の会と高江弁護団は、共同声明を出しましたので、下記のとおり紹介します。

 

高江オスプレイパッド建設差止仮処分申立事件決定に対する声明

 東村高江のオスプレイパッド建設に関し、高江の住民ら31名がその差止めを求めて仮処分を申し立てた事件について、那覇地方裁判所は、2016年12月6日、住民らの申立を却下する決定を下した。

 高江のオスプレイパッドは、著しい騒音に加えて墜落の危険や環境への悪影響などが懸念されるオスプレイの訓練に利用されるものであるが、とりわけ本年6月の飛行訓練による騒音被害は異常であって、既設ヘリパッドに加えて、新たなオスプレイパッドが建設されれば、甚大な騒音被害にさらされることは明らかな状況にある。

 これに対し、裁判所は、甚大な騒音が発生した2016年6月の騒音についてはこれを軽視し、また、きわめて不規則な飛行による騒音が発生するという演習場としての特殊性を考慮せずに、住民らの訴える騒音被害について、十分な疎明がなされていないとして、これを却下した。

 この判断は、オスプレイの飛行訓練による騒音に耐えかねて本件申立を行った住民らの声に耳を傾けず、工事完了後には、いわゆる第三者行為論を裁判所が採用する限り、被害を食い止める方法がないにも関わらず、裁判所自らが、漫然と騒音被害発生に手を貸すものであり、断じて許すことはできない。

 近時、各地の裁判所においては、原子力発電所の再稼働差止めを認める判決や、自衛隊機の夜間飛行差止めを認める判決など、人間の尊厳や環境の保全に配慮した画期的な判決が出される中、那覇地裁がこのような決定を下したのは誠に遺憾である。

 私たちは、裁判所が人権の砦としての役割を放棄し、住民らの訴える被害を直視せず、国策に追従して騒音被害の発生に手を貸したことに強く抗議するとともに、今後も正当な表現活動として、高江オスプレイパッド建設に対し、抗議を続けていくものである。

2016年12月6日

 高江ヘリパッドいらない住民の会

 高 江 弁 護 団

 

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2016年12月07日(水)

7月1日開催シンポジウム「命の森やんばるをいかに守るか~『やんばる国立公園』案を検証する~」のお知らせ

 

シンポジウムのお知らせです。

当事務所の弁護士喜多と赤嶺が共同代表を務める「やんばるDONぐり~ず」と「NPO法人 奥間川流域保護基金」の共催で、下記のシンポジウムを開催することになりました。

 

 

「命の森やんばるをいかに守るか~『やんばる国立公園』案を検証する~」
日時:2016年7月1日(金)18:30~
場所:てぃるる2階会議室(沖縄県男女共同参画センター、那覇市西3-11-1)
共催:やんばるDONぐり~ず、NPO法人奥間川流域保護基金
★参加費無料★

問い合わせは当事務所まで 098-917-1088

 

2016年7月1日やんばるシンポチラシ

 

2016年06月13日(月)

意見書「やんばる地域の国立公園化計画の問題点」の報道について

 

 2016年3月23日に、やんばるDONぐり~ず(当事務所の喜多と赤嶺が共同代表)や日本森林生態系保護ネットワーク等が連名で「やんばる地域の国立公園化計画の問題点」という意見書を発表しました。

 このことが、翌日(3月24日)の沖縄タイムスと琉球新報で紹介されました。記事のリンクを下に貼り付けます。また、琉球新報では英語版HPにも記事が紹介されました。

 

沖縄タイムス 2016年3月24日「やんばる国立公園「狭すぎる」 環境団体が意見書」 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=160043

琉球新報 2016年3月24日『やんばる国立公園 特別保護区「狭い」 自然団体、再考促す』 http://ryukyushimpo.jp/news/entry-244494.html

 

琉球新報 英語版HP

Environmental groups say plan for Yambaru National Park conservation area falls short March 24, 2016 Ryukyu Shimpo

http://english.ryukyushimpo.jp/2016/03/30/24740/

2016年04月01日(金)

やんばる地域の国立公園化計画の問題点

 

 今月、環境省は沖縄本島北部のやんばる地域を国立公園化する方針を発表しました。

 これに対し、当事務所の弁護士喜多と弁護士赤嶺が共同代表を務める自然保護団体・やんばるDONぐり~ずは、日本森林生態系保護ネットワーク等と連名で、「やんばる地域の国立公園化計画の問題点」という意見書を発表しました。

 意見書は、関係省庁、沖縄県、関係自治体に送付します。

意見書1ページ目

画像をクリックするとPDFで意見書全文をご覧いただけます

2016年03月23日(水)

キャンプシュワブゲート前における沖縄県警機動隊による不当な身体拘束に対する抗議声明 辺野古埋立承認取消訴訟弁護団

 

 7月29日、当事務所の弁護士も参加している「辺野古埋立承認取消訴訟弁護団」が、米軍キャンプ・シュワブゲート前における県警の不当な身体拘束に対する声明を発表しました。以下、声明文の全文を紹介します。

 

   キャンプシュワブゲート前における沖縄県警機動隊による不当な身体拘束に対する抗議声明

 

1  名護市辺野古の新基地建設に反対する市民らの米軍キャンプ・シュワブのゲート前での抗議行動に対し、沖縄県警は、多数の機動隊員を動員して、市民らを排除した上、歩道脇において警察車両と鉄柵を用いて一時的な拘束場所を作り上げ、排除した市民を拘束するという行為を繰り返している。
 県警機動隊によるこれらの行為は、令状に基づかない身体拘束であり、憲法33条および34条に明らかに違反するものである。


2  これらの不当な身体拘束に関しては、上記身体拘束の現場において、県警機動隊員らに対し、当弁護団所属の弁護士が直接その法的根拠を問うたが、隊員らは、それらの質問を一切を無視して、市民に対する違法な身体拘束を繰り返した。
 しかしながら、市民らは、いずれも非暴力による抗議活動を行っているものであって、身体拘束をしなければ安全が確保できないような状況にはなく、県警機動隊による上記身体拘束は、法律上の説明が全くできない違法行為そのものである。
 さらに、県警機動隊らの排除行為は、複数名で市民の手足を制圧して身体を持ち上げ、あるいは、両腕を羽交い締めにして拘束する等して、身体の自由を直接的に奪った上で柵内に運び込むというものであって、仮に、市民の安全確保という目的であったとしても、手段の相当性を大きく逸脱するものである。
 このような県警機動隊らの行為は、市民らの基本的人権を無視し、さらには人間としての尊厳を顧みずに、あたかも「物」と同様に扱うものであって、明らかに違法かつ不当なものであるといわざるを得ない。


3  ところで、報道によると、県警は取材に対し、「人々の安全確保やトラブル防止などの観点から、法令にのっとって適切に措置している」、「人々を移動させて違法状態を解消し、車両が入るまで飛び出さないよう、資機材や車両を活用している」などと説明しているようである(2015年7月29日沖縄タイムス朝刊)。
 しかしながら、ここでいう「法令」が何を指すかは、全く明らかでない。仮に、警察官職務執行法をその根拠にしているとしても、同法は人の生命身体又は財産に危険が及ぶおそれがある場合に限り、必要な限度でこれを避けるための措置をとることができることを述べているに過ぎない。憲法上認められた表現活動を非暴力で行う市民が、そのような危険を及ぼす可能性は極めて乏しく、仮に、「人々を移動させて違法状態を解消」することが是認されたとしても、当該市民らを「資機材や車両を活用」して拘束することは、法が許容する範囲を明らかに超えている。


4  また、県警機動隊らがキャンプシュワブゲート前で行っている身体の違法な拘束は、現政権の憲法軽視の態度の表れともいえる。
 すなわち、現政権は、国民の大半が反対の意思を表明し、圧倒的多数の憲法学者が違憲と述べている安全保障法案を、衆議院にて強行採決した。
 現在、キャンプシュワブゲート前で行われている違法な身体拘束にせよ、違憲な安全保障法案の強行採決にせよ、憲法を軽視する現政権の態度が端的に表れているものであって、我々は日本の立憲主義、法治主義、民主主義のあり方に危機感を抱かざるをえない。


5  そもそも、キャンプ・シュワブ近傍で行われている辺野古新基地建設反対の市民らの活動は、憲法上認められた表現の自由の行使の一環でもある。特に政治的表現の自由は、民主主義社会の根幹をなす人権であることから、これに対する権力的な規制は抑制的でなければならないことはいうまでもない。
 我々は、県警に対し、公務員が遵守すべき憲法その他の法令の要件に従い、市民の政治的表現活動の自由に対して十分な配慮をなすよう、強く求めるものである。


                                                 辺野古埋立承認取消訴訟弁護団
                                                      団 長 池 宮 城 紀 夫

2015年07月30日(木)

ご存じですか?~B型肝炎訴訟&C型肝炎訴訟~

 

ご存じですか?~B型肝炎訴訟&C型肝炎訴訟~

弁護士 上原智子

 

 腹部の右上に位置する肝臓は、栄養素を変化させて貯蓄する代謝機能、アルコールなどを中和する解毒作用、脂肪を消化するために必要な胆汁を作る消化機能をもっています。肝臓は、私たちが健康な毎日を過ごすために、文字通り肝心要(かんじんかなめ)の臓器なのです。

 しかし、私たちの身の回りには、慢性肝炎、肝硬変、肝癌などの肝臓病に苦しむ方が少なくありません。肝臓病の原因はいくつか考えられますが、我が国では、アルコールなどよりは、B型やC型の肝炎ウイルスが血液などに感染して起こるウイルス性の肝臓病が多いと言われています。

 では、B型やC型の肝炎ウイルスはどのような経路で感染するのでしょうか。それぞれの感染経路は判明しているだけでもいくつかありますが、重大なのは、病気を予防するために義務付けられた乳幼児期の予防接種(B型)や出産などでの大量出血を抑えるために投与された特定の血液製剤(C型)で相当数の方が感染したという事実です。

 予防接種や血液製剤で感染した方(被害者)が国などの責任を問う裁判を起こし、政治や世論に働きかけるなど地道な活動を積み重ねて、それぞれの被害者を一律に救済(給付金を支給)するための法律が制定されました。これらの法律の適用を受けるためには国を相手に裁判を起こす必要がありますが、全国に弁護団が結成され、既に多くの被害者が国と和解して給付金の支給を受けています。

 我が国の肝炎ウイルスの持続感染者は、B型が110万人~140万人、C型が190万人~230万人存在すると推定されています。自覚症状がないことが多いため、適切な時期に治療を受ける機会がなく、本人が気づかないうちに肝硬変や肝癌へ移行する危険があります。

 肝炎ウイルスの保有の有無についてご不明な方は、保健所などで無料検査も行われていますので、早めのご確認をおすすめします。また、B型やC型の肝炎ウイルスに持続感染している方は、B型肝炎訴訟やC型肝炎訴訟の詳細について、当事務所(098-917-1088)まで、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。(当事務所はB型肝炎訴訟九州弁護団の沖縄での窓口となっています)

 

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2015年05月26日(火)

海上保安庁の違法警備に対する抗議声明

 

 名護市大浦湾においての、海上保管庁の違法警備に対する抗議声明を、当事務所の弁護士も参加している辺野古新基地建設反対弁護団、基地の県内移設に反対する県民会議、ヘリ基地反対協議会の連名で出しました。声明文を以下のとおり紹介します。 
                                       

海上保安庁の違法警備に対する抗議声明
                                   

1  2015年4月28日、名護市大浦湾において、警備活動を行っている海上保安官により、辺野古新基地建設に反対する抗議船(定員6名)1隻が転覆させられ、乗員1名が救急搬送された事件が発生した。しかも、この事件は、既にエンジンを停止して動きを止めている抗議船に対し、複数の海上保安官が強引に乗り込んだために発生したものであって、上記海上保安官らの行為は、何ら必要のない行為である上、人命を危険に晒す許し難い行為であった。
 海上保安庁の過剰警備に関しては、同年2月10日、定員に達していた抗議船に複数の海上保安官が乗り込んで船体を傾かせた転覆未遂事件や、同年4月27日にも、抗議船に海上保安庁のゴムボートを衝突させ、船体を損傷させた事件も存する。上記各事件に加え、海上保安庁は、安全指導に名を借りて、市民やマスメディアが乗り組んでいる船舶やカヌーの停止、カヌーの転覆、船舶の強制曳航、取材妨害などの措置に及んでいる。これらの警備活動中に、市民が海上保安官による暴力を受けて負傷した事件も発生しており、捜査機関が現在捜査中である。


2  また、海上保安官が強制的な措置をとりうるのは、海上保安庁法18条に定める要件すなわち、①海難等の危険な事態、②生命身体への危険や財産への重大な損害のおそれ、③急を要する、という3つの要件を充足した場合に限られ、かつ取り得る措置も、船舶の停止や、危険行為の制止など、限定列挙されている。
 本来、人に対する強制処分は、裁判官の発する令状に基づかなければならないものであり、上記措置は、「令状主義」に対する緊急やむを得ない例外措置であって、その要件は厳格に解釈されなければならない。
 現在、海上保安庁が行っている海上での強制措置は、上記3要件を充足しておらず、また、船舶を転覆させる行為は海上保安庁法に規定されている強制的な措置の範囲を超えており、違法な行為であることは明らかである。
 なお、同条1項は、「犯罪が正に行われようとするのを認めた場合」にも、強制措置をとりうることを認めているが、市民らの抗議活動は正当な表現行為である上、本件抗議船は、既にエンジンを停止して動きを止めていたものであり、これを転覆させることまでを法が許容していないことは明らかである。
 したがって、このような違法行為については、告訴をし、厳しい処罰を求めていく。


3  そもそも、辺野古新基地建設に対する市民の活動は、憲法上認められた表現の自由の行使の一環でもある。特に政治的表現の自由は、民主主義社会の根幹をなす人権であることから、これに対する権力的な規制は抑制的でなければならない。
 私たちは、海上保安庁に対し、法の定める強制措置の際の厳格な要件を遵守し、かつ市民の政治的表現活動の自由に対して十分な配慮をなすよう、強く求める。

 

2015年5月1日

内閣総理大臣 安倍晋三 殿
国土交通省大臣 太田昭宏 殿
海上保安庁長官 佐藤雄二 殿
第11管区海上保安部 御中

                                        基地の県内移設に反対する県民会議
                                          共同代表 山城博治
                                        ヘリ基地反対協議会
                                          代 表 安次富 浩
                                        辺野古新基地建設反対弁護団
                                        代 表 池宮城 紀夫

2015年05月22日(金)

命の森やんばる訴訟判決の報告

 

命の森やんばる訴訟判決の報告

弁護士 喜 多 自 然

1 やんばるの自然環境と開発の経緯
 やんばるは沖縄県北部,国頭村,大宜味村,東村の三村にまたがって広がる地域で,イタジイを中心とした亜熱帯の照葉樹林帯が広がる森林地帯である。ここにはノグチゲラ,ヤンバルクイナ,ヤンバルテナガコガネなどの固有種・希少種が多数生息している。これだけの固有種が30平方キロメートルほどの地域に生息する状況は日本のみならず世界的にも稀で,世界的にも生物多様性に富んだ,特に保護すべき地域である。環境省も2003年に奄美・琉球諸島を世界自然遺産登録の候補地としてあげていた(同時に候補地としてあげていた知床と小笠原はすでに登録されている。)。
 しかし,このやんばる地域は開発の危機に瀕している。とくに沖縄の本土復帰(1972年)以降,ダム開発,土地改良事業などの大型公共事業が行われてきた。そのなかで現在でもとくに問題になっているのが,林道開発,伐採,森林施業などの林業の名目で行われる開発である。林道については,やんばるにはすでに編み目のように林道が張り巡らされているし,森林伐採は,皆伐という,草木を全て伐採して山を丸裸にする伐採が毎年10ヘクタールほどの規模で行われている。
 このような開発は林業の名の下に行われているものの,それは「業」として行われているというにはほど遠いものである。「業」として行う以上,将来にわたって一定の採算が確保され,地元経済にも資するものでなければならないが,やんばるの開発は異なる。民間の林家が所有する森林を育てて収穫するという,本土で行われているような林業ではなく,ほぼ全ては国頭村という村が所有する森林について,立木が国頭村森林組合に払い下げされて皆伐された後,皆伐された場所を植林するというものである。植林やその後の森林施業の過程で国庫から多額の補助金が出るためその補助金目当てに伐採が行われるという悪循環に陥っているのが現状である。
 林道についていえば,とくに地形の急峻なやんばるの森に,周囲の木を伐採し,切り土盛り土をし,沢を埋め立てて,幅3,4メートルのコンクリートの道路を通すというもので,自然環境への影響は計り知れない。これも実際には林業にはほとんど使われておらず,昆虫や蝶,ランなどを目当てにした密猟者が山奥に入りやすくなったり,林道でヤンバルクイナが車にひかれたり,夏には林道を渡ろうとした小動物が途中で力尽きて干からびたりと,悪影響が大きい。もともと急峻な地形ゆえに法面も急峻で,台風のたびに大規模な崩落を起こし,数千万円の復旧費用がかかるといった問題もある。

 

2 訴訟の提起と林道事業の休止
 すでにやんばるには網の目のように林道が張り巡らされていたが,さらに多数の林道が計画されてきた。とくに楚洲仲尾線と呼ばれる林道の予定地は,沖縄の固有種で,やんばるの森の重要な構成種であるオキナワウラジロガシの大木のある,やんばるの中でもとくに重要な場所であった。
 そこで,沖縄県の住民が,林道開設事業の公金支出差止めを求めて2007年に提訴した住民訴訟がこの訴訟である。弁護団は,関根孝道弁護士が中心になって結成した。訴状の段階ではやんばるの森林の重要性を強調し,良好な自然環境の保全・形成等の配慮義務違反(森林法4条3項),保安林解除手続違反(森林法26条1項),文化財保護法・同条例違反,種の保存法違反などを指摘した。
 その後,県民世論の高まりもあって,上記の楚洲仲尾線は140メートルほど完成した時点で工事がストップすることになった。

 

3 林道の問題から森林施業全体の問題へ,訴訟の争点の広がり
 この訴訟は当初は林道開設事業を問題にしていたのであるが,この林道は森林環境保全整備事業,つまり名目上の林業のための事業の一つであった。そこで,訴訟においても,森林環境保全整備事業そのものについて争点にすることになった。まず問題にしたのが費用対効果の問題である。森林環境保全整備事業を行う場合,国庫(林野庁)から補助金が支給されるが,その際に林野庁が定めたマニュアルには費用対効果の計算方法が定められており,1.0を上回らなければならないとの定めがあった。そこで,このマニュアルに違反する計算方法が取られていることを主張した。このような主張に関連して,費用対効果の計算の基礎資料の提出を被告に求めたところ,存在しないとの回答があった。この費用対効果の問題は裁判のみならず沖縄県議会でも大問題になり,県は費用対効果の再計算を行わなければならない事態に発展した。とくにマニュアルでは森林環境保全整備事業の森林整備分の費用対効果算出が義務付けられているのに,沖縄県では全くなされていないことを県職員の尋問などで明らかにした。
 このような裁判,議会の動きと県民世論により,沖縄県の公共事業評価監視委員会により,林道事業はすべて休止という扱いになった。
 また,訴訟では,世界遺産条約や生物多様性条約などの国際条約により,地方自治体が生物多様性を保護する義務を負っており,十分な科学的調査を行わずに生物多様性を破壊することはそのような義務に違反するという主張も展開した。国際環境法の磯崎博司先生にも証言をしていただいた。
 世界遺産条約は,登録の有無にかかわらず世界遺産としての価値を有する地域の保護義務を規定している。冒頭に指摘したとおり沖縄県はやんばるの世界遺産登録を推進する立場にあり,世界遺産としての価値を有することは沖縄県自身が認めていることである。この点は登録に向けた行政間のやりとりを記載した文書や県自然保護課課長の尋問により明らかにした。

 

4 地裁判決のポイント
 地裁判決は,形式的には却下判決であり,「近い将来当該財務会計行為がされることが相当の確実さをもって予測される場合」ではなく,訴えの利益がなく訴訟要件を欠くとの判断であった。そのように判断した直接の理由は,林道事業が休止から既に7年以上が経過しているため,これが再開することが見込まれない,というものである。
 しかし,裁判所はこの点を論じるに当たって,重要な判示を行った。判決はまず,やんばるが世界遺産登録候補地に選定されていること,沖縄県自身が登録を推進し,2012年の「沖縄21世紀ビジョン基本計画」や2013年の「生物多様性おきなわ戦略」にもその旨明記されていることからも分かるとおり,やんばる地域の保護を「環境行政上の重要目標に掲げ,同地域が世界的に見ても生物多様性保全上重要な地域であることを明確に打ち出して,その環境保全に本格的に乗り出そうとしている」と指摘した。林道事業の計画当初と比較して,「沖縄県の環境行政には顕著な変化が見られる」と指摘したのである。
 そして,このような環境行政等との整合を図る観点から,「現時点において現状のままで本件5路線の開設事業を再開することになれば,社会通念上これを是認することはできず,社会的妥当性を著しく損ない,裁量権の逸脱・濫用と評価されかねないものと考えられる」と判示した。
 要するに,沖縄県がやんばる地域の保全を図ることを重要な政策目標に掲げている状況で林道開設事業の再開は許されない,ゆえに支出の見込みがないので訴えを却下するという論理が採用されたのである。
 我々は,訴訟提起とその後の運動により林道が休止されたこと,判決により上記のような判示が示されたことから,控訴はしないことにしたので,判決は確定した。

 

5 自然科学調査との連動
 この裁判は,日本森林生態系保護ネットワーク(CONFE JAPAN)との連携して進められた。科学者が裁判の期日ごとにやんばるを訪問し,現地を視察したほか,自然科学的な調査を行い,これまで十分に解明されてこなかったやんばるの生態系や,開発が自然環境に与える影響について地道な調査研究を行い,最終的に調査報告にまとめた。このような調査はCONFE事務局長で訴訟の代理人でもある北海道の市川守弘弁護士が裁判に反映させてきた。
 調査結果に関連したシンポジウムなども行い,普及啓発活動も行った。
 微力ではあるが,裁判の途中から代理人になった沖縄の弁護士(私と赤嶺朝子弁護士)が共同代表となって,「やんばるDONぐりーず」という自然保護団体を立ち上げるという動きもあった。

 

6 残された課題
 現在,沖縄県は2013年に「やんばる型森林業の推進」と題する文書を作成するなどして,やんばるの森林をゾーニングして,自然保護と林業の調和を図るという方針を立てている。しかしその実体は,保護区は全体の約7%でこの場所は現時点でも既に保護されている場所が大部分である。つまり,現在の開発に規制をかけるようなものにはなっておらず,むしろ自然保護との調和名目に現在の開発を継続するお墨付きを作ろうとしているとも見ることができる。
 沖縄県や国頭村は,持続可能性のない森林伐採を止めて,やんばるの森林の保護,自然を生かした地域づくりに方針を転換すべきである。そのためには,これまでの運動をさらに発展させるべく,やんばるの重要性,貴重性を訴えていくことが必要である。

 以 上

 

皆伐された森

2014年 やんばる宜名真の伐採の様子

(本稿は、日本環境法律家連名発行の「環境と正義NO.177 2015.5月号」に掲載された原稿です)

2015年05月11日(月)

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