みなさまと共に歩んで半世紀

お知らせ

 

宮古島市のスラップ訴訟提起を求める議案書に対する抗議声明

 

 宮古島市が宮古島ごみ問題住民訴訟を提起した宮古島市住民の原告6名に対し、損害賠償請求の訴え提起を求める議案書を宮古島市議会に提出している問題で、本日、宮古島ごみ問題住民訴訟弁護団は、高江弁護団、識名トンネル住民訴訟弁護団、石垣市教科書問題住民訴訟弁護団、やんばる命の森第3次住民訴訟弁護団と共同で記者会見を開き、抗議声明を発表しました。

 

「宮古島市のスラップ訴訟提起を求める議案書に対する抗議声明」

1 去る9月3日、宮古島市は、宮古島ごみ問題住民訴訟を提起した宮古島市住民6名に対し、当該住民らが訴訟手続や新聞報道において、虚偽の事実を繰り返し続け、宮古島市の名誉を毀損したとして、1100万円の損害賠償請求の訴えを提起を求める議案書を議会に提出した。

2 しかしながら、本来、地方公共団体は、住民主権(住民自治)や民主主義の原理の下にあり、その行政活動等の公的行動は主権者である住民の不断の批判と監視の下に置かれている。民主主義社会においては、マスコミも含め、住民が市や市政に対し、自由に批判することが不可欠であり、市や市政を批判する住民に対し、市が訴訟提起しようとすることは、住民を恫喝、威嚇するもので、住民の表現の自由や知る権利を侵害し、民主主義の破壊に繋がるもので断じて許されない。

 この点について、行政の事業に不正があるとの趣旨の番組を放映した番組制作会社等に対し、当該地方公共団体が、名誉毀損に該当するとして、損害賠償請求等訴訟を提起した事案において、東京高等裁判所は、2003年2月19日判決において、上記と同様の趣旨を述べた上で、地方公共団体に対する名誉毀損が認められる場合はあっても、地方公共団体と当該住民との間では名誉毀損は制度上予定されておらず、成立の余地はないと判断した。

 また、上記判決は、首長その他地方公共団体の個々の機関に対する表現行為が名誉毀損に該当する場合であっても、同時に当該地方公共団体の社会的評価を低下させるものでない限り、地方公共団体に対する名誉毀損には当たらないと判示しており、名誉毀損の成否に関し、行政の機関そのものと当該地方公共団体それ自体とでは明確に区別する判断を示した。

 上記判決でも示されているとおり、宮古島市住民は市及び市政を自由に批判できるのが当然であり、宮古島市と宮古島市の住民との間では名誉毀損は成立しえないものである。

 

3 ところで、発端となった宮古島ごみ問題住民訴訟は、宮古島市が業者との間で市内3か所の不法投棄ごみを撤去し原状回復をする内容の業務を委託する契約(以下、本件契約という)を締結し、代金を支払ったものの、その後対象となった不法投棄ごみの現場に大量のごみが残存することが発覚し、宮古島市が当初行った「ごみゼロ宣言」も撤回するに至った件について、委託料を合計2251万円とする本件契約が宮古島市に過大な経費負担を与える違法な財務会計行為であること等を主張して市民が提訴した住民訴訟である。

 大量のごみが残存することが発覚した後、宮古島市議会に設置された不法投棄ごみ残存問題調査特別委員会でその違法性が厳しく指摘された。ごみは現在も現場に残存したままである。

 住民訴訟では、住民らの請求は退けられたものの、判決では契約の履行確保のための監督・検査については、「きわめて杜撰な事務処理であるとの誹りを免れない」と指摘された。

 また、大量のごみが残存することが発覚した後、本件契約を担当していた宮古島市の職員が、計量票の改ざんなどを行った。同職員は、虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴され、有罪判決が下され、同判決は確定した。

 そもそも、住民訴訟は、財務会計上の違法な行為等が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから、これを防止するため、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として、住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え、もつて地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものであって、財務会計上の行為等の適否ないしその是正の要否について地方公共団体の判断と住民の判断とが相反し対立する場合に、住民が自らの手により違法の防止又は是正をはかることができる点に、制度の本来の意義がある(最高裁判所1978年3月30日判決参照)。

 宮古島ごみ問題住民訴訟は行政の財務会計上の適正化がまさに問題となる事案であり、市民は参政権の一種として訴訟提起し、判決でも稚拙な事務処理であると指摘されたのである。

 住民訴訟の原告であった宮古島市の住民6名は、財務会計行為の違法可能性の追及と不適切な行政行為への批判をしたにすぎないのである。

 

4 それにもかかわらず、宮古島ごみ問題住民訴訟の原告に対し、同市が名誉毀損損害賠償請求訴訟を提起するということは、市政を批判する住民に対し恫喝、弾圧目的とする裁判であることは明らかである。

 住民運動に対する恫喝、弾圧目的とする裁判は、スラップ(SLAPP)訴訟と呼ばれる。それは、Strategic Lawsuit Against Public Participation(市民参加を阻害するための戦略的な訴訟)の頭文字をとったもので、「公衆の関心事について表現の自由を行使した者に対して起こされた戦略的訴訟」という意味である。権力を持っている者が、市民を相手として、自らに批判的な意見や運動を弾圧する目的でなされる訴訟である。

 スラップ訴訟は、表現の自由の保障された社会にとって、重大な脅威となる。裁判を起こされた場合、肉体的、精神的な苦痛といった負担や、経済的な負担が生じる。スラップ訴訟は、相手方にそのような負担を強いる、つまり苦痛を与えることを目的とし、結果的に、相手方が恐怖心から今後反対運動から手をひくこと、つまり萎縮させることを目的としているのである。

 アメリカでは、表現の自由を守るため、多くの州でスラップ訴訟を規制する法律がある。日本でも、著しく相当性を欠く訴えの提起は訴権の濫用として違法になる(不当訴訟)。例えば、高知地方裁判所は、2012年7月31日、高知県黒潮町が、町議が発行した広報誌に町政を批判した記事が同町の名誉毀損に当たるとして当該町議に対し損害賠償を請求した訴訟について、不当訴訟に当たる判断し、同町に当該町議に対し損害賠償金を支払うよう命じた(2019年9月10日付沖縄タイムス参照)

 宮古島市議会がこのような訴訟提起を許すこととなれば、住民訴訟の原告のみならず、宮古島市の住民が行政を批判することを自己規制する可能性があり、民主主義の原理を損ねる結果を招くことにもなり、不当訴訟に該当する。

 

5 以上のとおり、上記議案書提出は民主主義を破壊するもので、また、宮古島市に対する名誉毀損も成立しえない。加えて、住民の表現の自由を威嚇するスラップ訴訟に該当し、訴訟提起することになれば、逆に反訴等により、宮古島市が損害賠償責任を負う可能性もある。

 我々は、住民訴訟において、住民側の代理人としてこれまで関与し、現に関与している弁護団であるが、宮古島市の今回の議案書提案につき、住民訴訟上看過しえない重大な問題が存することに鑑みて、敢えて本声明を公表するとともに、議案書を提出した宮古島市当局に対しては抗議と議案書の撤回を求めるとともに、仮に撤回されなければ、議会においては速やかに否決することを強く求めるものである。

2019年9月12日

 

                       宮古島ごみ問題住民訴訟弁護団

高江弁護団

識名トンネル住民訴訟弁護団

石垣市教科書問題住民訴訟弁護団

やんばる命の森第3次住民訴訟弁護団

2019年09月12日(木)

2019/10/30「ダイバーシティシンポジウムin沖縄2019」のご案内

 

政府による「新たな外国人材の受け入れに」係る様々な施策が展開される中、

今後増えゆく在住外国人と共生するために、自治体や企業などがどのように

共生のための取り組みを進めていくことができるのか、また将来発生することが

予想される課題等への対応策などについて考える機会を持つべく、シンポジウムが開催されます。

 

当事務所の弁護士白充もパネリストとして登壇します。

 

つきましては、多くの皆様にご参加いただきたく、ご案内いたします。

参加については、HPにおいて申込みが必要となります。詳しくはHPでご確認をお願いいたします。

 

「ダイバーシティシンポジウムin沖縄2019」

1.日時:2019年10月30日(水)13:00~(12:45開場)

2.場所:沖縄産業支援センター 中ホール

3.申し込み方法等:HPをチェック

https://kokusai.oihf.or.jp/events/1562202960/

 

 

2019年09月02日(月)

2019/7/2 映画『愛と法』トークライブのご案内

 

当事務所の弁護士白充が、沖縄市のシアタードーナツでの映画鑑賞イベントで、パネリストとしてトークライブを行います。

ぜひお越し下さい。

 

【映画『愛と法』トークライブ付き上映】

【日時】2019年7月2日(火)19時上映スタート(トークライブは20時35分より)

【場所】シアタードーナツ 沖縄市中央1-3-17-2F(胡屋バス停まえ)

イベントの詳細は下記のURLをご参照下さい。

https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=2304935566426798&id=100007311316240

2019年06月25日(火)

2・24県民投票では「埋立反対」に「○」を!

 

 きたる2月24日(日)の辺野古埋立の賛否を問う県民投票実施にあたり、当事務所から訴えをさせていただきます。


辺野古新基地建設は反対!

 私たちは、次の理由で辺野古の新基地建設に断固として反対します。
① 沖縄の基地負担軽減につながらないどころか、さらなる軍事要塞化を招きます
 辺野古新基地は耐用年数100年とも200年とも言われ、また普天間基地になかった桟橋や弾薬の積み下ろし機能などが加わります。沖縄に米軍基地ができてからもう74年、それにもかかわらず、将来にわたって米軍基地を固定化しようとするものです。辺野古に新基地をつくれば、オスプレイが沖縄の空を自由に飛び回ることは変わらないでしょうし、米軍による事件、事故をなくすことにはつながりません。

② 沖縄と日本、東アジアの平和の実現に逆行するものです
 話し合いによる朝鮮半島の平和実現への努力が続けられています。ここにみられるとおり、軍事力による威嚇で平和を実現することはできず、軍拡競争を招くだけです。また、一歩譲って、一定の軍事力による抑止が必要だという立場にたっても、少なくとも「殴り込み部隊」である海兵隊の輸送機オスプレイのための航空基地は、「わが国の安全」のためにもまったく不必要なものです。

③ 貴重な辺野古、大浦湾の自然環境を破壊し、沖縄の宝を失います
 辺野古・大浦湾周辺は、絶滅が危惧されている沖縄ジュゴンの餌場である海草藻場が広がっています。また、この海域で確認された生物種は5800種以上にもなり、世界遺産の知床や屋久島よりも豊かな生物多様性が維持されています。生物多様性は、私たちが将来に残していかねばならない地球の財産であり、沖縄の発展のための貴重な資源でもあります。辺野古埋立は、貴重な自然を永遠に失わせるものです。


普天間基地は即時撤去を!

 県民投票を妨害した政権与党は、「普天間の危険性除去がとりあげられてない」といちゃもんをつけました。しかし、普天間基地が航空基地として欠陥があることは政府も認めざるを得ないことですし、そもそも沖縄戦により不法に取り上げられた土地なのですから、市民の安全と財産を守るために無条件で返還しなければなりません。「辺野古ができなければ普天間固定化」という人たちこそ、市民のいのちと権利をもてあそぶものです。


新基地建設は止められる!

 政府は強圧的に新基地建設を進めようとしていますが、実は困難に直面しています。もともと埋立そのものは5年で完成との計画でしたが、2013年12月の仲井眞元知事の埋立承認から5年以上経っても、県民のたたかいによって事業は進展していません。土砂投入が始まりましたが、それでも現時点では予定(2100万㎥、ダンプ350万台分)の0.02%しか投入できていません。さらには、大浦湾側の軟弱地盤が判明し、海面下90mという経験したことのない深い地盤での改良工事に直面しています。新たに必要な砂杭は7万6000本にも及ぶとされ、仮に工事が進められるとしてもそれだけで5年近くさらに要すると予測されています。
 もともと、地元住民の支持なくして外国軍隊が安定的に駐留することはできません。米軍さえも、フィリピンをはじめ多くの国で基地を閉鎖してきました。この沖縄でも、沖縄県民のたたかいが、不可能とも思われていた日本復帰を実現し、普天間基地の返還を言明させるに至ったのです。そして、辺野古新基地は96年以降22年にわたってその実現を阻止してきました。まさに、県民の声を受けた「現実的な選択」は、辺野古を断念すること以外にありません。


県民の力で平和を実現しよう!

 県民投票は、これまで沖縄県民が示してきた民意を、さらに決定的に大きな力を結集して示すまたとない機会です。もちろん、県民投票で多数の民意が示されたからといって、安倍政権が簡単に辺野古をあきらめるわけはありません。しかし、このような民衆のたたかいが、必ず歴史を変えていくことは、沖縄の戦後の歴史が明らかにしていますし、お隣の韓国でも民衆が政権を変えていきました。県民投票の成功で、国民の間での理解を広め、政権を追い詰めていきましょう。

 

 みんなで「辺野古埋立『反対』」に”○”を!


 マキテェーナイビランドー チバラナヤーサイ!


                                         2019年2月
                                            沖縄合同法律事務所所員一同

2019年02月13日(水)

年末年始休業のお知らせ

 

当事務所は、下記の期間を年末年始休業日とさせていただきます。

皆様にはご不便をおかけいたしますが、予めご了承くださいますようお願いいたします。

              記

2018年12月28日(金)~2019年1月6日(日)

2018年12月27日(木)

過労死等防止対策推進シンポジウムのご案内

 

 近年、働き過ぎやパワーハラスメント等の労働問題によって多くの方の尊い命や心身の健康が損なわれ深刻な社会問題となっています。

 本シンポジウムでは有識者や過労死をされた方のご遺族にもご登壇をいただき、過労死等の現状や課題、防止対策について探ります。

 

過労死等防止対策推進シンポジウム

プログラム

[沖縄労働局から現状の報告]

[過労死等防止対策推進全国センターより報告]

[講演]「健康な職場をつくるために」講師:弁護士 川人博

[過労死等を考える家族の会より体験談発表]高橋幸美さん

日時:2018年12月4日(火)15:00~17:00(受付14:30~)

場所:沖縄産業支援センター(那覇市字小禄1831-1)

主催:厚生労働省 後援:沖縄県

協力:過労死等防止対策推進全国センター、全国過労死を考える家族の会、過労死弁護団全国連絡会議

過労死_沖縄_ページ_1過労死_沖縄_ページ_2

 

2018年10月11日(木)

「働くもののいのちと健康を守る沖縄センター」が結成されました

 

 2018年4月27日、労働者のいのちと健康を守るため、労働組合・医療・法務・教育の専門家が一体となって問題解決にあたることを目的とした組織「働くもののいのちと健康を守る沖縄センター」結成されました。

 

 沖縄合同法律事務所も会員となっており、弁護士喜多自然が幹事を務めています。

 当事務所としても、過労死の防止を始めとして、働くもののいのちと健康を守る取組みにも力を入れていきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

いの健沖縄News vol.1(発行日180618)2-1

いの健沖縄News vol.1(発行日180618)2-2

 

関連リンク 働くもののいのちと健康を守る全国センター

http://www.inoken.gr.jp/index.htm

2018年07月12日(木)

「辺野古」県民投票を実現させる署名について

 

 『「辺野古」県民投票の会』において、2018年5月23日から同年7月23日までの期間で、

「辺野古米軍基地建設ための埋立ての賛否を問う県民投票条例の制定を求める沖縄県条例制定請求者署名」

の署名を集める取り組みが行われています。

 詳しくは「辺野古」県民投票の会のサイト( https://henokokenmintohyo.okinawa/ )をご覧ください。

 当事務所でも、「署名スポット」となって、同署名活動に取り組んでいますので、署名がまだの方はぜひ当事務所にお立ち寄りください。

 

県民投票1県民投票2

2018年06月18日(月)

2018憲法講演会のご案内

 

『2018 憲法講演会-命を守る9条の希望-』のご案内です。

 今年も5月3日に、憲法講演会(主催:沖縄県憲法普及協議会、沖縄人権協会、日本科学者会議沖縄支部)

が開催されます。講演の内容は下記のとおりです(詳細はチラシをご覧ください)。

 今年は会場が宜野湾市民会館となっておりますので、ご注意ください。

 

『2018 憲法講演会-命を守る9条の希望-』

日時 2018年5月3日午後1時30分

会場 宜野湾市民会館大ホール(宜野湾市役所となり、宜野湾市野嵩1-1-2)

   ※駐車場には限りがあります。バス・タクシーをご利用ください。

1 【講演】私たちの憲法を考える~憲法キホンの「キ」から"改憲"問題まで~

  伊藤真(弁護士)

2 模擬憲法カフェ~憲法カフェへようこそ~

  話し手:林千賀子(弁護士)

3 「島の未来は市民が決める」~石垣島の自衛隊配備問題~

  話し手:藤井幸子(いしがき女性9条の会事務局長、石垣島への自衛隊配備を止める

 

入場料 一般700円、学生・障がいがある方500円、高校生以下無料

主催:沖縄県憲法普及協議会、沖縄人権協会、日本科学者会議沖縄支部

連絡先:098-854-3381または098-917-1088(沖縄県憲法普及協議会)

 

2018憲法講演会 2018憲法講演会裏面 

2018年04月16日(月)

国頭村での森林伐採に対する抗議声明

 

 

 当事務所の弁護士喜多と赤嶺が共同代表を、弁護士下地が事務局長を務めるやんばるDONぐり~ずは、2018年4月3日に、県内外の環境保護団体・個人とともに、国頭村内で行われている森林伐採について抗議声明を発表し、次の宛先に抗議声明を発送しました。

〇送付先

・国頭村長 ・国頭村議会議長 ・国頭村森林組合代表理事組合長 ・沖縄県知事

・環境省環境大臣 ・林野庁長官 ・那覇自然環境事務所 ・沖縄森林管理署 ・沖縄県議会

・大宜味村長 ・大宜味村議会 ・東村長 ・東村議会

 

 抗議声明の本文を下記に貼り付けます。

抗議声明

抗議声明の趣旨

 我々は,国頭村有地において現在進行中の伐採に対して抗議の意思を表明するとともに,下記のとおり緊急に提言する。

1 国頭村有地において現在進行中の伐採を直ちに中止すること

2 今後やんばるの森林の伐採を行わず保全・保護のためのあらゆる方策をとること

抗議声明の理由

1 環境省及び沖縄県は,やんばる地域の世界遺産登録を目指す立場を明確にしている。環境省は,2016年9月15日,国内33箇所目の国立公園として,沖縄島北部地域を「やんばる国立公園」として新たに指定した。これは世界遺産登録をにらんでのことだという。

 また,政府は,2017年2月2日までに,「奄美大島,徳之島,沖縄島北部および西表島」の世界遺産登録への正式推薦書をユネスコ本部に提出した。

2 他方,国頭村内では,現在,下記の3か所において伐採が行われている。その伐採は,皆伐という,草木を全て伐採して山を丸裸にする方法を採っている。

①字楚洲・我地原811-2 1.72ha

②字宜名真・吉波山1284-1 2.68ha

③字宇良・与俣原317-15 約0.58ha

 このうち②字宜名真の伐採地は,国立公園の第3種特別地域(1.38ha)が含まれている。国立公園内において1.38haという広範囲が皆伐されているという事実は,国立公園の指定が,やんばるの自然保護に十分な有効性を発揮していないことを示している。

3 やんばるは,世界自然遺産登録条件のうち、「生態系」及び「生物多様性」の項目に該当する可能性があるとされている。

 しかし,皆伐が行われ続けると,上記登録基準に非該当とされ,登録が困難になることは明らかである。

4 やんばる地域の世界自然遺産登録を目指している環境省,沖縄県及び国頭村が,このような事態を容認・放置するのは,行政として矛盾した対応である。

 世界遺産登録は,やんばるに世界的な注目を集め,集合知をもってその発展を模索する契機となりうる。持続可能性を無視して自然を利用し続けること及び人間が生活して富を得るための代償であるならばやむを得ないという態度を再考し,国頭三村が森林の保全・保護と経済的自立を両立する機会として利用すべきである。

 我々は,環境省,沖縄県及び国頭村に対し,世界遺産登録という方向性に沿い,やんばるの自然をこれ以上破壊せず,保全・保護する方策を採るよう提言する。

 

国頭村宜名真の伐採地

2017.11.12 伐採地(楚洲)

 

国頭村楚洲の伐採地

2017.11.12 伐採地(宜名真)

 

やんばるDONぐり~ずホームページ

https://yanbarudonguri.localinfo.jp/

2018年04月16日(月)